美学 17世紀の絵画論(3)オランダ 授業用
読んで頂くテクストはこちらです。
アンゲルはレンブラントの故郷でもあったレイデンで活動した画家で、このテクストは、もともとは聖ルカの祝日に、画家たちの集会で行われた講演の原稿でした。レイデンには当時まだ画家だけの組合がなく、この講演は、市当局に画家組合の設立を認めてもらうためのプロモーションでもあったのです。そのため、講演は絵画芸術の尊さや難しさを強調して再確認するものになっており、優れた画家であるためには、如何に多くの学識や技能を身につけていなくてはならないかという主張も行われています。
テクストのなかには、同時代の絵画への直接的な言及も出てきます。幾つか挙げておきましょう。
ピレモンとバウキスを描いた「ラテン語にも通じた画家」としてアンゲルが誰を念頭に置いていたのかは断定できませんが、学識者として当時から名高かったルーベンスかもしれません。彼には、次のような作品があります。
アンゲルの講演との前後関係は分かりませんが、以下の作品などには、ピレモンとバウキスの家の貧しさが良く表されているかもしれません。
回転する車輪の表現について論じたくだりは、アンゲルの講演でもよく知られた部分です。レンブラントとニコラース・マースの作品をあげておきますので見比べてみて下さい。全力で自分をさらうハデスに抵抗するプロセルピナの身振りは迫真的ですが(また彼女を救おうとする友達たちの努力にも目が行きますが)確かに馬の疾走ぶりに比べて、車輪は止まって見えるかも? 一方で、マースの糸紡ぎ車は確かに動きの表現を意図しているようです。
マースはアンゲルの講演を知っていたのでしょうか。あるいはその内容を人づてに聞くか何かしたのでしょうか。興味深いことに、アンゲルの講演を知っていたとは思えないスペインのベラスケスも、同じ頃に同様の回る車輪の表現を取り入れています。